塗り固められんとする 国境税とVPN規制という壁

2020年5月14日

 

就任演説で『アメリカ第一。私たちは米国製品を購入し、米国人を雇用する』と宣言したトランプ氏が、TPP離脱の大統領令に署名した。
本当に『大統領として』日本と中国の貿易姿勢を批判した。
これの影響はかなり出てくると思われる。
トランプ氏に協調するかっこうで 共和党は、輸入への課税を強化し、輸出は税を減免する「国境税」の導入を検討しだした。
WTO協定を無視する、ということなのだろうか。
Forbesは【トランプ新政権で最も不安が増す10か国】と、トランプ氏が輸入品に対して関税を強化すれば、特に影響を受ける国をランキングにした。その順番は以下のものだ。
貿易姿勢が批判された我が国は4位だが、物理的に国境に壁を造ると公約されていたメキシコ、そしてもう一つの隣国カナダは2位と3位にランクインさせている。
1位: 中国
2位: メキシコ
3位: カナダ
4位: 日本
5位: ドイツ
先の就任演説をうけて、実際にトヨタも、鴻海・シャープも米国内での大型の生産拠点投資を、矢継ぎ早に公にしている。
そして、当たり前だが、このランキングの 断然…つか圧倒的な1位は中国だ。
たぶん2位から5位までを足しても、1位の受ける影響に及ばないだろう。
それくらい、中国はアメリカとの通商に依存している。
ここ30年間、世界の工場であり続けた中国は、冷戦なきあとのアメリカが主導してきた、世界の秩序のなかで、ものづくり の国の役割を担ってきたのだ。
その役割 を、トランプ氏は批判し、この先の未来を変えようとしている。
アメリカはメキシコやカナダのように、物理的な国境は中国との間に共有していない。
が、輸入関税という大きな壁を立てることで、中国にとって絶大なる脅威になるのだ。
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かたや その中国は、いまや世界の消費経済の中心にある。
彼の国の 爆買いによって潤っているのは日本だけではない。
彼らのマネーは、欧州全体、アジア・オセアニア全体、世界経済に対して、ここ20年、最もおおきなインパクトであり続けている。もちろんアメリカにとっても同様だ。
21世紀以降のアメリカをけん引してきたのは、Google、Facebook、Apple、Cisco、Microsoftに代表されるITプラットフォーム企業がつくってきた新しい産業であることは自明だが、それらITの超巨大企業が作ってきた新しい流儀がまかり通らなかった国が中国である。
彼らですら中国市場には苦戦… いや諦めているといってもいい。
そう、中国だけはあっという間に世界を席巻してしまったUBERもAirbubもやすやすとは入れないのだ。
何故か。それはひとえに、中国が作ってきた、独自のインターネットサービスに対する 壁 によって阻まれてきたからだ。
私たちに限らず、アジアの、いや世界の人々の過半は、いまやGoogle、Facebookが提供するサービスなしでは生きていけなくなっている。
僕は東南アジアを全域をぐるぐる巡回する生活をもう8年続けているが、今やタイ、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、ベトナムといった東南アジアの都市生活者にとっては Google、Facebookが 生命線になっている。これは大袈裟ではない。ほんとうだ。
ところが彼らもまた他の全ての人々と同様に、中国に一歩でも入ると、Google、Facebookグループ、twitterが提供している ほとんどすべてのサービスが利用できない。
インターネットを経由しても、物理的に繋がらないのだ。サービス自体がブロックされているのだ。
其れはいまや世界一、インターネットユーザーのいる国である中国の人民にとっては当たり前の状況だ。
が、それが当たり前でない、外から中国を訪れた人にとっては、まさに 息もできないようになるのは、たやすく想像できると思う
そう、一歩でも壁の内側に入ると、中国の外と遮断されてしまう というのが、ここ20年ずっと横たわってきた現実だ。
だから、小生を含む日本人に限らず…中国が支配する秩序の外側にいる多くの異邦人たちは、これまで「翻墻(壁越え)」を可能にした商用の仮想プライベートネットワーク(VPN)サービスを使って、このGreat China Wallの外側の世界に繋がり、息をしてきたのだ。
ところが、ここにきて、こんなニュースが伝わってきた。
■ 中国がネット規制回避のVPN全面禁止へ、中国在住日本人への影響大 Record China
これは、ある意味で トランプ氏に対する対抗措置だと言ってもいいだろう。
やってしまったら、メキシコとの間に物理的な壁を造るよりも、はるかに影響が大きい… 壁の強化になるのは間違いないからだ。
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おりしも、こんな記事が話題になっている。
■ 「米中戦争の可能性は非常に高い」トランプ氏側近が驚愕見解 ダイヤモンド
中国とアメリカは、再び激しい冷戦の時代を迎えるのだろうか。