私も履歴書 16 |タマネギ理論

真田さんとはナニモノなのか、ナニを考えていたのか、ということを随分と後年になってから、たびたび考えたことがあります。

例えば、何故、あの関学甲南ウエルカムダンスパーティが成功したのか、など。

そもそも真田さんに、運転免許合宿の斡旋を事業として取り組むので手伝え、と最初に謂われたときに、あわせて説明された、『マイライセンスは、従来の斡旋業者とは異なり、免許合宿での教則・学科講習の合間や週末に、テニスやスキーに行ってレジャー感を打ち出す』 ってのは、、、確かにキャッチーな訴求だとは思いました。

でも、後になって思えば、ほぼ知名度ゼロのマイライセンスが、半年前のハイシーズン('87年2~4月)に、ごく僅かな広告宣伝費で、166名もの集客に成功したのは、そのコンテンツや企画のお陰ではありませんでした。

そう、それはイチにも2にも、大学の合格発表日当日に校門で『合格おめでとうございまーす!』と声を掛けながら、翌日以降に入校できる合宿制の自動車学校斡旋のパンフレットを配布したことにありました。

すなわち
免許取得のニーズを喚起したのではなく、マイライセンスの認知をひろく獲得したのではなく、もっとも運転免許取得のニーズの高まる、その当日に潜在見込み客の背中を押すこと一点に集中したから、でした。

マイライセンスは、競合の斡旋業者が一年中ダラダラと広告を打っていたのを尻目に、『土砂降りの雨が降り出した瞬間に、目の前で傘を売る』 商売にしたのです。

真田さんと行動を共にするようになって一年余り、、、僕はさなさんの傍らで、その師のビジネスアイデアを聞き、相槌とツッコミを入れるのが大好きでした。

そんなとき彼は、よく折れ線グラフなどに描いて説明してくれました。
その中でも、さなさんが『タマネギ理論』、あるいは『壺の論理』と呼んでいたものがあります。

Yの縦軸が時間、Xの横軸がニーズの総量です。
受験勉強をしていたころや大学受験前は、少しずつ合格そして入学後のキャンパスライフについて妄想が昂まっていきます。そしてじりじりと個々個別に運転免許やクルマのことを調べたり、見聞きするのです。徐々に確実にニーズが大きくなってはいきます。

ただ、それはあくまでも目標の対価であり、インセンティブです。なぜなら合格しなければ、浪人すれば、免許を取得するということは翌年に延期になるのが普通なのです。ただ月日の進行とともに、より具体的に合格以降の行動イメージが膨らんでいきます。

そのニーズの深浅や真剣度は、人それぞれ程度差はありますが、より具体的に検討を進める総人口は増えていき、大学の合格発表の日、その値が、総量が、MAXになるのが合格発表の当日・・・大学合格=即、免許取得、の思考回路の人口が最大になる、ということなのです。

その日だけを狙い澄まし、ミートする、のだと。

その日以降はまた急速に確実に、ニーズの総量を示すXの横軸が減衰していくグラフを示し、それをそのX軸の膨らんで縮むカタチから、そう呼んでいたのです。

そして、これは当時(そして今も)リクルートが唱えていた ライフタイムイベントの市場をミートする理屈そのもの、でした。

僕自身が運転免許合宿の代理店を選んだ過程が、まさにそれに当てはまりました。
大学合格してすぐに読んだLマガジンに載ってた広告に電話してたのです。

だから、その『大学、短大の新入生向けのサークルカタログ=ViePlanマガジンを、入学式で無料配布する』 というアイデア、はまさに真田さんの真骨頂といえるものでした。

当時のリョーマが、大手の広告代理店や販促の企画会社からバラバラと請けていた大学生・短大生向けの販促活動を、入学式直後という・・・ある意味でその世代の子たちが最もアグレッシブに前向きな行動、購買、意思決定を行うであろう時期に、サークルカタログに広告という形態で集約して情報を盛り込むことで、、最も効率的にターゲットマーケティングが出来る、という算段だったのです。

なるほど・・・そうか。

ViePlanマガジンは日本信販の大学生向けクレジットカードだけでなく、、一気にさまざまな企業の新入生向けの広告・販促活動を一括掲載することのできる、大学・短大の新入生向けメディア=コンタクトポイントの決定版にできる、のか。