私も履歴書  28|宴のおわり。

 

ゴールデンウイーク前の最後の平日となった4月24日夕刻、ダイヤルキューネットワークの社員全員に招集がかかりました。

 

西山さんが「会社はもう終わりです。これまでのような事業は継続できません」と言いました。その横で真田さんは黙って頭を下げていました。
僕らの会社は、ダイヤルQ2の事実上の終了に、連座する格好で91年4月末あっけなく破綻したのです。

同僚のみんなも、この日のあることを予期していたのでしょう。静かに発表を受け止めているだけのようにも見えました。
僕は、新卒社会人になってわずか20日ぐらいで入社した会社がつぶれてしまったわけです。
4月に入社した10人の社員は、入社4週間目にして路頭に迷うことになってしまいました。

創業から1年半、一世を風靡した日本で最初で、そして最後のダイヤルQ2ベンチャーは終わったのです。
呆気にとられていました。なぜかわからないのですけど、当時の僕は最後の一日まで「僕らはなんとかなる、なんとかできる」と信じていたからです。
だからそのときの瓦解を、自分の体験として受け止めることができませんでした。

突然の破綻で、お手上げ。グシャと会社が潰れてしまった。

それより、会社の経営成長を信じて普通に就職してた人が可哀想だなぁ・・・と。
入社して、僕の部署に配属されていた方々は、普通の方だったので、、なんか、急に現実に引き戻されました。

それまで夢を見ていたことに気づいたような。無邪気にゲームに興じていたことを思い知らされたかのような。

就職したばっかりの会社が倒産するんですからね、、、なんということでしょうか。
私はただ、だらしなく一人泣くしかありませんでした。

自分の部署は7人も社員がいるのに、僕が部長で、部下はみんな僕より年上で、私は彼らになんの責任も取ることができないのです。
我々、会社を創めてしまった者たちの責任なのに。

壊れてみて、初めて、すごくとんでもないことをしてしまった、という悔恨、というか鈍器で後頭部を殴打されたかのような痛みを。
僕ははじめて、会社経営の怖さ、人を雇用する、ということの原罪を知ったのです。