日本企業のアジア本社移転はあるのか

2020年5月11日

 

21世紀はアジアの世紀。

未来ある日本企業が持続的成長を果たすために、
今なお潤沢な内需を持つ我が国日本に安住せず、
むしろ製造のみならずR&Dや管財部門、そしてなにより自社商材の 販売の現場・消費の現場として、伸びゆくアジアを面で捉え、戦略的にアジアへ直接進出すべきだ!!
というのは、昨年7月以降のこのブログでの加藤の一貫している(つもりの)主張です。

遡って 2年半前の2007年4月4日
あの大前研一御大が日経BPnetに連載した「産業突然死」の時代の人生論コラム第72回にて
「上場を廃止して海外に脱出するサンスター」という例を2ページ目に挙げておられます。

これが今見てもかなり過剰に刺激的な内容で、大前さんをして【上場していた会社が、海外に本社を移し、特別目的会社を作って三角合併に近い形でTOBを成功させた初めての例】といわしめ、
更には
【スイスに本社を移すということは、日本政府に「もう法人税は払わないよ」と言っているようなものだ。】とか書いています。
いやぁ大前さん、そういうわけ(移転イコール徴税拒否)でもないでしょう!って・・・かなり(;^ω^)荒っぽい論調なのです。

で、この大前さんの記事を例にとりながら、先般9月18日 長井利尚さんが 「日本電産は率先して本社を海外移転せよ!」というかなり超過激なブログ・エントリを上げられました。これまた熱い檄文となっています。

 ただ実際には、日本の上場企業が本社を国外に移転するには、現行ルールでは例に挙がったサンスター同様、一度TOBなどを経て非上場化するしかありません。これはたいへんハードルがきわめて高いのです!。(痛みも甚大だと思います)

また、加藤は
ここで引き合いになっている「世界一高い水準の日本の法人税」の租税回避というよりは、
むしろまったく別の理由(アジアを面で捉えた トータルなマーケティング活動)で、シンガポールに拠点の設置をしたらどうか、と多くの企業に提案してきました。

既にユニクロやサイゼリアといった優れた消費財企業や飲食業がアジアの司令塔としてシンガポールにHQを設置しています。

これまでのエントリでご紹介してきたように、多民族の優秀な人財の確保や安全面、ビジネスのし易さ、航空網の利便性、など多くの理由でシンガポールはアジアのHQ立地に最適とみられるからです。

先般のエントリでもご紹介したように、P&Gは既にこの10月から日本市場担当のマーケティング担当がまとめてごっそりシンガポールに移っていますし、

楽天の三木谷さんの講演では、あのレノボを例に本社機能は不要&適地適役(マーケはシンガポール)の分散経営を紹介しています。

そして
いよいよ加藤の周りの世界でもそういった動きが本格化してきましたよ。

当方も関係の深いケンコーコムさんが
世界中の在留邦人に対しての日本の医薬品の国境を越えた通販に乗り出すことを先日発表したのです。楽しみでしょ?

早ければ1年以内にも、複数の日本企業のシンガポールへの本社移転が実現する案件が進んていますよぅ!

追伸
ところで、このエントリを書き終えたあたりで、池田信夫さんのエコノMIX異論正論<「租税競争」に日本は生き残れるか>が・・。たしかにそうですね。

でも加藤が租税競争よりも、
深刻な問題だと思っているのは、民主党が進めている
製造業派遣の禁止アルバイトの最低時給1000円引き上げ です。

4月以降の海外小会社の配当95%非課税もあいまって、これこそ生産海外移転・国内空洞化への引き金になるのではないか、と思っています。

・・・まぁ、加藤自身は空洞化上等!論者ではあるのですが。