アジア内需に挑む日本の消費財企業 3 ■  アジア消費者市場での日本企業の市場評価

2022年3月8日

前回前々回に続き、シンガポール日本商工会議所さまが会員向けに発行されている会報誌「月報」7月号へ寄稿させていただいた拙文「アジア内需に挑む日本の消費財企業~国内高齢化を乗り越える 独資或いはJV勝ち組の共通点~」を一部改稿して御紹介します。

さて、ここ一ヶ月で大変な話題となった日本企業同士の提携といえば、一にも二にもサッポロ・ポッカの提携だと思います。

もちろんこの提携に至る道程には、その直前にまとまったキリン+サントリーという国内勝ち組である食品・清涼飲料の完全競合同士の合従連衡が大きく影響していることは間違いないでしょう。

さぁ、みなさんは日本にいてサッポロとポッカについてどのようなイメージをお持ちになられていますか?。

そう!いわゆる業界下位企業ですね(笑)。
東京にいるとそう思うでしょ。いや日本全体でいうと実際そうなんです。

でもね、この駄文をご覧の貴殿が北海道在住であればサッポロを、或いは東海地方在住であればポッカを、視ている感覚ってまったく違うんですよね。日々生きている中でのブランド接点シェアは超高いですからね。our major brand ですよ。

御当地ブランドが強いのは、マクロのシェアではなく、ドミナントにおける市場占有率が絶対シェアに達しているから=地元消費者に選択の余地を与えないだけの認知が浸透しているからなんですな。
沖縄ではオリオンビールしかありえないのも、その一例でしょう。

・・・ちなみに大阪だとサンガリアオリバーソースヒガシマルがメジャーブランドなんですよ。

このポッカさん。実はシンガポール、タイなどではコカコーラに肩を並べるメジャーな清涼飲料水ブランドなんです。特にお茶(烏龍茶、緑茶、紅茶)は強い。
加藤もシンガポールにいてポッカに対する認識が大きく変わりました。

そしてこの現象、ポッカに限りません。
エースコック、フマキラー、マンダム、東洋水産、ライオン、スズキ、高島屋、ベスト電器、ピジョン、、、、同一カテゴリで他企業に比べ国内シェアは低位でも、アジアの国々ではむしろ上位或いは寡占シェアのメーカーやリテールが一社また一社と存在感を出してきています。

現に上記にあげた企業の数社は既に国内の売上/利益をアジアでの其れが抜き去っています。

更にこれからは外食産業やサービス業が大きく期待できるでしょう。

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3 ■アジア消費者市場での日本企業の市場評価

では、日本市場における勝ち組、あるいは負け組≒シェア下位の企業は、自社の未来に向けて、どのような取り組みを行っていくべきなんだろう、と考えたのが、シンガポール移住のきっかけとなりました。

あるブランドが、自らへの新たな消費を促すには、既に発生している同一目的の消費において、既存他社製品からの買い替えを起すか、まったく新規の消費を促すしかありません。そこではじめて見当たるのが国外市場です。

内需が極めて潤沢にあり、かつ消費が成熟している日本では、後者はいまやほとんど在り得ないですが、一方で新興国では、まずは需要創造と喚起のフェイズからブランディングを行うことが出来ます。
また「三つ子の魂」ではないですが、事実上はじめての消費の際のブランドになることにより、消費者との絆を強固に固めやすい、という利点もあります。

たとえば中国を例に採ってみると解りやすいです。
昨年の移住時点において、それまでの数年で中国に進出している日本の消費財メーカーは、少ないながらも例えばユニチャーム、ピジョン、明治乳業、パイロット、DHC、ファンケル、アサヒビールなどがありました。
外食では吉野家、サイゼリア、COCO壱番屋。またSPA(製造小売業)では、ユニクロ、DAISO、無印良品、などの成長・成功が顕著になってきていました。

上記のような中国への進出を果たしている企業と、日本国内市場での競合企業との株価比較を見ると、マーケットにおける企業価値の評価にもはっきりと違いが見えています。

これらのメーカーは日本国内の市場においては必ずしも上位シェアとは限らない会社があるのですが、そもそも製品・サービスのクオリティを絶対価値として持ち込み、中国市場において(ブランドチェンジというよりむしろ)新市場創造に挑んだ結果、高いブランド価値を手にしていました。

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日本はこれから消費市場が縮小を続け、ブランドチェンジをますます起こさない高齢市場になっていきます。
そこに、政権交代+高速道路無料を端緒にした、かつてないほどの「値下げ圧力」が消費財・消費者向けサービスを創る会社を襲うことでしょう。

すべからくあらゆる産業の国内シェア下位の会社は、ジリ貧になるにつれ、シェア上位の会社への吸収合併へ、とシナリオが周りから固められていくのではないか、とみています。

もちろん
そこで国内での消費デフレ圧力にあわせ、大手リテールのPB生産企業化や、品質を下げ廉価商品メーカーになるという方法も立派な選択肢の一つだと思います。

が、いっぽうでアジアの中間層の消費力が飛躍的に上がっています。
金融危機なども馬力で乗り越えて確実
な足取りで伸びているのです。

この成長市場にサッポロとポッカはteamとなってアジアに挑んでほしい、と思います。

そしてこのteamに続け!とばかりに、多くの日本企業がこのリセッションのタイミングを機にアジアへと果敢に挑んでほしいと願い、この原稿を書いているのです。